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蒼星(日本語入力配列)

日本語を入力するキーボードの配列は、ほとんどの人が「QWERTYローマ字」か「JISかな」のどちらかを使っていると思います。また、「親指シフト(NICOLA)」もよく知られています。そのほかにもいろいろな配列がこれまでに作られてきました。このページで紹介する配列は私(実那川蒼)が作ったもので、「蒼星」(そうせい)といいます。ちなみに「蒼星」の名前の由来は、「」や「」と同じ日本語入力配列という意味をこめて「星」を選び、それに私の好きな色である「蒼」を冠したものです。蒼星は2005年に作られ、2009年に一部改良されました。

蒼星は「かな系配列」と「ローマ字系配列」の2つに大別される日本語入力配列のうち、ローマ字系配列に属します。蒼星は、英語キーボードの配列としてQWERTY以外で最もよく知られている配列である「Dvorak」をベースにしています。Dvorakベースの日本語入力配列は既知のものとして「DvorakJP」と「ACT」がありますが、蒼星はより日本語に適するために一部のキーを変更し、またShiftキーを使用することによってDvorakJPやACTの持っている拡張機能をさらに強化し、交互打鍵の比率も上げています。また、「M式」や「SKY」(および、それを改良した「SKY♯」など)からも大きな影響を受けています。

蒼星の配列図は以下のようになります。


これは日本語(106タイプ)キーボードのものですが、英語(101タイプ)キーボードの配列図も用意しています。スペースキーにグレーの文字で「Shift」と書いてある理由は後で説明します。

DvorakJPやACTはDvorakの左手側にkの代役にcを割り当てていますが、pとyはそのままの位置で、母音を反転させて右手で打ったり、拗音拡張として右手の別のキーをyの代役に割り当てています。蒼星ではそのようなことをせず、キーボードの青い文字のように、「日本語モードではcをk、fをp、vをyに置き換える」および「拗音を打つときはShiftキーを押しながらその子音を打つ」という方法を採用しました。これにより、拗音も(母音も数に含めて)2打で打てます。置き換えの対象になったf(ファ行)とv(ヴァ行)の入力については後で説明します。

蒼星がDvorakJPやACTと本質に異なる点として、たとえば日本語モードで(Dvorakの)cのキーを打鍵したとき、DvorakJPやACTではそのままcが出力されるのに対して、蒼星では「キートップに書いてある文字」を出力するという原則がありますので、それに従ってkが出力されます。また、Shift+cを打鍵するとDvorakJPやACTでは大文字のCが出力されるはずですが、蒼星ではやはり「キートップに書いてある文字」であるkyが出力されます。

母音についても同様で、Shiftキーを打たないで入力できる母音はaiueoのほかに「案」「院」などに使われるan、inなど「ん」のついた母音(撥音拡張)と、「系」「総」などに使われるai、ouなどの二重母音(二重母音拡張)があります。また、Shiftキーを一緒に打つ母音は、「カー」「ゴー」などに使われるa-、i-などの長音符号がついた母音(長音拡張)と、「タッ(プ)」、「ポッ(ト)」などに使われるa'、i'などの促音がついた母音(促音拡張)、「ファ」「ティ」などの特殊な音に使われるxa、xiなどの母音(特殊音拡張)です。なお、ACTと異なり、ア行の場合でも各種拡張を使用することができます。

上でも書いたとおり、各種拡張で出力される文字は母音の場合でも「キートップに書いてある文字」が原則です。ただし、「ローマ字定義の変更を最小限にとどめる」のと「キートップの文字を見やすく、分かりやすくする」という2つの理由で、撥音拡張と促音拡張に限ってはキートップに書いてある文字そのままでは出力されません。たとえば「an」のキーの出力は「ann」、「a'」のキーの出力は「axtu」になります。

子音sの後ろに各種キーが続く場合を表にしてみました。なお、サ行には特殊音拡張はありません。

sasisuseso
sanさんsinしんsunすんsenせんsonそん
saiさいsuiすいsuuすうseiせいsouそう
sa-さーsi-しーsu-すーse-せーso-そー
sa'さっsi'しっsu'すっse'せっso'そっ

特殊音の表は以下のようになります。ただし、IME標準のローマ字定義で普通に「sye」で入力できる「しぇ」などは特殊音には含めていません。なお、この特殊音を入力するにはIMEのローマ字定義に特殊音を追加しなければならない場合もあるため、オプションとします。

kxaくぁkxiくぃ  kxeくぇkxoくぉ
txaつぁtxiてぃtxuとぅtxeつぇtxoつぉ
    tyxuてゅ    
hxaふぁhxiふぃ  hxeふぇhxoふぉ
    hyxuふゅ    
yxa  yxu  yxo
wxawxi  wxewxoうぉ
gxaぐぁgxiぐぃ  gxeぐぇgxoぐぉ
  dxiでぃdxuどぅ    
    dyxuでゅ    
bxaヴぁbxiヴぃbxubxeヴぇbxoヴぉ
    byxuヴゅ    

特殊音拡張を使用すると撥音、二重母音、長音、促音の各種拡張と同時に使用出来なくなりますが、特殊音拡張の後にShift+wで「ん」、Shift+y(Dvorakのv)で「ー」、Shift+lで「っ」を使って撥音、長音、促音を入力することによって対処できます。また右手で2打続けて打つのを容認すれば、蒼星の特殊音拡張を使用せずに、IME標準のローマ字定義(たとえばtsa=つぁ、thi=てぃ)を利用することによって各種拡張を使用することが出来ます(ファ行とヴァ行を除く)。

2005年のバージョンでは、特殊音に「*x*」「*yx*」と「*l*」「*yl*」の両方を定義していましたが、2009年のバージョンで「*x*」「*yx*」のみに変更しました。

例外として、以下の音は撥音、二重母音、長音、促音の各種拡張が簡単にできるようにするために特殊な出力をします。上段が標準の出力、下段が例外的な出力です。これはIMEのローマ字定義に依存し、IMEによって自動的に修正されることもあるため、オプションとします。

wowonをん
うぉん
wouをう
うぉう
wo-をー
うぉー
wo'をっ
うぉっ

これまで見てきたことからも分かるとおり、蒼星ではShiftキーを多用します。通常のキーボードでは小指でShiftキーを押すことになり、押しにくいので、SpaceキーをShiftキーと兼用する「SandS」を採用することによって親指でShiftキーが押せるようになっているのです。そのほかの案として、変換キーと無変換キーをShiftキーと兼用する「H/MandS」(と命名しました)を採用することも考えられます。

さて、蒼星の実装には以下の条件を満たす必要があります。表にしてみます。

1. 英語モード(直接入力)と日本語モードの両方で別々にキー位置の入れ替えが可能であること。
2. 日本語モードでは「ローマ字入力」のときにキー位置の入れ替えが可能であること。
3. SandSかH/MandSのいずれかを搭載することが可能であること。または、親指で押せる位置にShiftキーが追加されていること。
4. できれば、韓国語モードや一部の中国語モード(倉頡方式などの部首による入力)の時にはキー位置が入れ替わらないこと。(1.と合わせて、各国語別にキー位置の入れ替えの可否を制御できるのが望ましい)

DvorakJPやACTでは「Dvorakのキー配列はそのままで、ローマ字定義だけを変更することによって各種拡張を実現する」のに対し、蒼星では「各種拡張を実現するために、Dvorakのキー配列の一部変更とローマ字定義の変更の両方を用いる」ため、どうしても実装するためのハードルが高くなってしまいます。これは蒼星の欠点のひとつです。

2005年の時点では、蒼星を完全実装することのできるキーカスタマイズソフトの存在が確認できていませんでしたが、2009年になって「DvorakJ」が登場し、蒼星が標準対応になりました。DvorakJは、特殊音拡張を使用するときでもIMEのローマ字定義に特殊音を追加する必要がないという優れものです。また、「繭姫」(現在テスト版)でも対応しているようです。

【あとがき】

蒼星にたどり着くまでに、いくつかの「没になった配列」があります。最初に考えたのは、M式やSKYをベースに、母音と子音を独自の配列にした「JIL(Japanese Input Layout)」でした。しかし、いろいろ考えていくうちにJILはその名も「日本語入力配列」であるので日本語の入力は申し分ないが、英語を入力するとつらいところがある(英語で一番頻出するeが左手小指に割り当てられていることなど)ので、日本語と英語の配列を兼用できるようにするために、Dvorakをベースにすることにたどり着きました。最初はJILにDvorakの頭文字を冠して「D-JIL」と呼んでいましたが、2005年の発表を機に「蒼星」と改称しました。

本文でも書いたように蒼星は実装のハードルが高いため、私が実際に使用するまでには至っていませんでしたが、2009年になり「DvorakJ」が登場したことと、私のメインPCが新しくなったことから、「親指ひゅんQ」によるNICOLA(親指シフト)から本格的に蒼星に乗り換えようと思います。


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